グローバリゼーションの本質は“想定外”、“掟破り”、“場外乱闘”

有事365日の時代のビジネス戦争に勝つためにはコミュニケーションを経営戦力とする発想が求められる

“グローバリゼーション”という世界規模のビジネス大戦争が始まっている。2020年は日本企業がグローバリゼーションの戦いに本格参戦する象徴の年という認識が定着しつつある。従来の中期計画の枠を越えてプラン2020を持つ企業が増えているのもそれが背景にある。2020年はオリンピック以上に日本のビジネスにとって意味深い年となる。それまでにどれだけ、グローバル大競争への備えを準備できるかがポスト2020年の日本企業のグローバリゼーションの命運を握る。

 

その波動の中で多くの日本企業が従来のビジネスモデルでは戦えないという自覚が出てきている。

従来の事業モデルが生み出すバリューで本当に世界で戦えるのか? 国内外を問わず今の社内意識で世界と互角に伍せるのか?

築き上げてきたブランドのままで新たな顧客層を取り込めるのか?持続可能な社会に対する地球規模での関心が高まる中で従来のCSR活動のあり方はどう変えればいいのか?グローバリゼーションが本格化する中でグローバル企業としての立ち位置をどうつくっていくのか?

これらの課題を解決する処方箋を2020年までには目処を立てることが日本企業に求められている。

 

一方、企業間“競争”の次元も変わってきた。“場外乱闘”という事態が始まっている。従来のように「市場」というリングの上で、廉価で良質の商品・サービスを提供、マーケットシェアを高めるだけでは市場で勝てない事態になっている。市場というリングの外で競争相手を引きずり落とす掟破りなやり方が横行している。企業間同士の訴訟戦争がグローバル規模で拡大する。当局や世論を動かして競争相手を不利な競争条件下に置く。投資家や株主を囲い込み、敵対的M&Aや委任状争奪戦を仕掛ける。

既存のビジネス市場に無料でサービスを提供、圧倒的シェアを確保、別のビジネスで稼ぐ。社会主義国がグローバル化の主戦場になる中で企業間競争の中に国が乱入してくる。戦略的に競争相手の営業秘密や人材を盗む。

正にビジネスにおける戦い方のパラダイムシフトが起こっている。

多くの日本企業はこの掟破りな攻撃に対して戸惑う。何故なら、この状況を仕切る、あるいは逆に仕掛けるアドバイザーやコンサルタントが日本では圧倒的に欠如しているからである。従来のような正攻法的なビジネス競争を前提としているコンサルティングでは太刀打ちできない状況になっている。

 

加えて、経営を取り巻く環境が「鬼は外、福は内」から「鬼は外、鬼は内」へと変貌している。鬼は社外だけでなく、社内にも潜んでいる。終身雇用の終焉、多様なキャリア志向への傾向などが社員の帰属意識を希薄化している。

良し悪しはともかく内部告発は日常化している。グローバル展開が進むに従い社員の日本人比率が急低下、組織全体の求心力が弱まってくる。逆に、日本人社員の意識がグローバル化を進める上で最大の障壁となる。グローバル戦略の一環で海外の企業を買うもカルチャーの軋轢、現地経営陣との対立などで失敗する。社内に話したことが社外にダダ漏れでレピュテーション毀損が起こる。購入していた部品が突然リコールでクライシスに引きずり込まれるなどサプライチェーンがやばい。

正に“内輪の世界”の激変が起こっている。経営において長年培ってきた社員やサプライヤーとの信頼関係はもはや十分条件ではない。また、「社内のことは社内が一番知っている、社内のことは社内でやる」という自前主義が企業を崩壊させる時代になってきている。この発想の転換は否が応でもでも日本経営は迫られてくる。

 

グローバリゼーションを機にビジネスの世界は有事365日の時代に入った。24時間大小様々なクライシスが起こっている。それらを事前に察知しながら手を打っていく、未然に摘み取っていく有事対応への意識と体制が必要となる。製造業で戦後最大の破産の元凶となったタカタのエアバッグリコール問題は米国で公聴会が開かれるなど2014年に公に騒がられるようになったが、2000年代の初めにはすでに問題の兆候があり、そこで手を打っていれば今回のような事態を回避できた可能性はある。最早、企業は平時の経営から有事の経営に意識を切り替えることがグローバリゼーションの大競争時代を生き抜くための必須条件になってきている。

 

この有事経営の最大の武器がコミュニケーションである。コミュニケーションを有事対応の“盾”とする。コミュニケーションを戦略実行の“矛”とする発想を持つことが必須である。コミュニケーションを“力”として認識する。そもそも、コミュニケーションとは神様が人間に与えた生き抜くための力である。企業も意識するかしないかにかかわらず、その力の恩恵にあずかっている。ただ、それを力と意識して使うことがコミュニケーションを経営戦力にする。コミュニケーションの経営戦力化なくしては日本企業のグローバリゼーションは覚束ない。