日本のコミュニケーションを“強くする”秘密とは(1)
「泥の文明」の著者、松本健一氏とお目にかかる機会を得た。松本氏は日本人のモノの考え方や感性は“コメ作り”から来ていると言う。一千年以上にもわたって“稲作”を行ってきた国は日本が世界で唯一だそうだ。そして、その経験の蓄積の中に、これからの世界を日本がリードしていく“秘密”が隠されていると主張する。大変面白い視点である。
先日、「明日の広告」の著者、佐藤尚之さんと“世界に通用する日本のコミュニケーションの強さとは”という話をした。雑誌ビジネス・アスキーの対談取材の時である。その時の結論は、「日本人の“多様性”に対する寛容な姿勢、そしてその“多様性”を融合する智恵である」ということになった。融合する智慧とは、言い換えれば、インテグレーション(Integration)力である。
「オバマ現象のカラクリ」の中でも、
八百万(やらよろず)の神に馴れた日本人は、一神教的な発想と違い、多様性に寛容である。多様性の中で共感を生んだオバマ流のコミュニケーションは日本人にとって相性が良い。オバマ流コミュニケーションを本当に理解できるのは日本人だ。そこに日本のコミュニケーションの世界に貢献できる強さを感じる
と言った趣旨を書いた。日本人が”多様性“に寛容なのは、この多神教的なものの考え方、感じ方からきているということで自分なりに合点していた。しかしながら、融合する智慧になぜ日本人が長けているのか、まだ、自分なりの説明ができていなかった。確かに、日本人は融合するチカラに優れている。自分が16年間携わった自動車産業などは、その最たるものだと実感している。日本が発明した自動車の基本技術はほとんどないと言って良い。ところが日本の自動車産業は世界最強を誇っている。
これは、まさに”融合のチカラ“による。欧米で発明された様々な技術をしっかりと”融合するチカラ“である。自動車産業は、多種多様な要素から成り立っている。それを支えている技術体系といえば、機械工学、電子工学、燃焼工学、応用化学、環境技術、安全技術などなど。さらに製造面では労働集約的である、一方資本集約的でもある。そのバリューチェーンも基礎研究、開発、製造から販売、サービスなど複雑多岐にわたる。2万点以上の部品から作られており、それらは数多くの部品メーカーによって開発、製造、供給されている。また、通商問題、環境問題など社会的な課題にも晒されている。その裾野の広さ複雑さはどの業界も匹敵できない。ひとつの”巨大生態系“といっても過言ではない。”生態系“ということは、自動車産業を支えているすべての構成要素が”つながっている(融合)“ということである。そこでは多種多様なものをどう”融合するか“が産業全体のパフォーマンスのレベルを決める。
この日本がもつ融合する智慧はどこにそのルーツをもつのか。松本健一氏と話して合点がいった。次のブログで、合点はいった理由を説明する。(つづく)
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