ロビイングの本質を実感する(後編)(戦略コミュニケーションの温故知新* 第7回)
(前回からの続き)はじめは、それらのレポートを読むことに努力したが、すべて英文でもあり、数週間で諦めた。いったい誰がこれらのレポートを読むのかと訝った(いぶかった)ものである。ただ実感したことは収集している情報の殆どが公の情報であるという事実である。
ロビイングと言えば、裏情報ばかりを扱っているものと想像していたが、実際は誰でもが入手できる情報がほとんどなのである。
別の視点から言うとアメリカではかなり多くの情報が公にされているということである。政策や法案が決まるプロセスが相当に透明である。そこでやり取りされる情報は誰もがアクセスできる。
重要なのは、それらの情報から何を読み取るか、さらにはそれらの情報をどう意味づけるか、そして、その中である個別の政策や法案に対する企業の立ち位置をどうつくり、伝えていくかがロビイングの中核業務であることが分かってきた。
言い換えれば、様々な情報が公にされているからロビイングが成り立つのである。
情報開示と透明性がロビイングという活動を支えている。
実際のところロビイングは国民の権利としてアメリカの憲法で保障されているのである。
この事実は“目から鱗(うろこ)”であった。
*「戦略コミュニケーションの温故知新」。このシリーズでは一度、原点回帰という意味で私のコミュニケーションの系譜を振り返り、整理し、そこから新たな発想を得ることが狙いです。コミュニケーションの妙なるところが伝えられれば幸いだと考えます。
~~~~~~~~~~~~~~~筆者経歴~~~~~~~~~~~~~~~~~
田中 慎一
フライシュマン・ヒラード・ジャパン 代表取締役社長
1978年、本田技研工業入社。
83年よりワシントンDCに駐在、米国における政府議会対策、マスコミ対策を担当。1994年~97年にかけ、セガ・エンタープライズの海外事業展開を担当。1997年にフライシュマン・ヒラードに参画し日本オフィスを立ち上げ、代表取締役に就任。日本の戦略コミュニケーション・コンサルタントの第一人者。近著に「オバマ戦略のカラクリ」「破壊者の流儀 不確かな社会を生き抜く”したたかさ”を学ぶ 」(共にアスキー新書)がある。
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