歴史上の偉人たちが“茶に興じた理由”(コミュニケーション百景 第17回)

「茶は暇つぶしやえせ教養主義になり易い、戦国時代の対決の世界を取り入れることによって、急にその重厚さを加えてくる」

と「敗者の条件」の中で著者会田雄次が語っている。

また

「実践活動の経験と洞察力を身につけた人間が、芸術の遥かに鋭い理解者になる」

と言い切り、信長、秀吉を芸術としての茶を進化させたと評価する。前に出版した「破壊者の流儀」の中で信長の茶について考えた。

信長はその非凡な実践活動の経験と洞察力を通じて、効果のある実践的なプロセスとして茶を完成させる。

利休はその信長のニーズに応えた。

リーダーたちの意識に働きかけ、動かすのが信長の茶である。信長のコミュニケーション力学の真骨頂のひとつ。

一方、より大衆に働きかけ、動かすのが秀吉の茶である。秀吉のコミュニケーション力学を垣間見る。

しかしながら、利休は秀吉のニーズに応えられず、結果は切腹。

ただ、重要な事は信長も秀吉も、実践的な活用と云う視点から茶に精力を注ぐ。

それと真逆なのが、信玄である。

信玄は京風文化にその精力をつぎ込む。

公家の歌づくりに修練、恋歌づくりではセミプロ並み。

この差が天下取りにどの程度、影響したかはわからないが、ひとつ重要なポイントは、何か事を成す事を決めた人間は自分の限られた能力を何処に集中させるかをよくよく真剣に考えることが重要であると云うこと。


趣味や教養も重要だが、敗者になりたくなければ、趣味や教養をあえて切り削いで行く覚悟も必要のようだ。
*「コミュニケーション百景」。このシリーズのモットーは“コミュニケーションを24時間考える”です。寝ても覚めてもコミュニケーションを考えることを信条にしています。コミュニケーションでいろいろと思いつくことを書き綴っていきたいと思っています。

~~~~~~~~~~~~~~~筆者経歴~~~~~~~~~~~~~~~~~

田中 慎一
フライシュマン・ヒラード・ジャパン 代表取締役社長

1978年、本田技研工業入社。
83年よりワシントンDCに駐在、米国における政府議会対策、マスコミ対策を担当。1994年~97年にかけ、セガ・エンタープライズの海外事業展開を担当。1997年にフライシュマン・ヒラードに参画し日本オフィスを立ち上げ、代表取締役に就任。日本の戦略コミュニケーション・コンサルタントの第一人者。近著に「オバマ戦略のカラクリ」「破壊者の流儀 不確かな社会を生き抜く”したたかさ”を学ぶ 」(共にアスキー新書)がある。

☆twitterアカウント:@ShinTanaka