戦略コミュニケーションの奥義、“自分との対話を制する”(前編)
自分との対話に勝って自分を動かす
コミュニケーションは人を動かす力である。
ところが、最も動かすことが難しい相手は自分である。
自分ほど思い通りにならないものはない。
人生、日々自分との葛藤とも言える。この葛藤をどう乗り切るか、自分との対話をどう制するかが、実はコミュニケーション力を飛躍させる鍵を握る。
コミュニケーションと言うと相手との対話を先に思い浮かべるが、先ずは自分との対話である。結果、自分を動かす、相手も動く。これが戦略コミュニケーションの基本発想である。
自分との対話が十分できていない人は自分も動かせなければ相手も動かすことができない。
日頃から“自問自答”の癖を身につけ自分との対話力を鍛えることがコミュニケーションのチカラを次のレベルに飛躍させる。
自分の思い込みが「相手を知る」ことを拒む
コミュニケーションはすべて“相手を知る”ところから始まる。相手を知らないと間違ったメッセージを伝えてしまう。逆に相手を十分知っていれば的確なメッセージを打ち込むことができ、相手との対話をリードできる。ところが、厄介なことに、相手を知る上で最大の敵が“自分の思い込み”なのである。
“相手を知る”とは、相手の“受け皿”を知ることである。こちらが話したことがどのように受け取られるかは相手の受け皿次第である。
こちらが発信したと思っているメッセージはメッセージではない。単なる情報発信である。その情報が相手の受け皿に届いた瞬間にメッセージになる。相手の受け皿次第で伝わるメッセージが変わる。
Aと言ってもBやCなどと伝わってしまう。受け皿を把握していないと相手に何が伝わるかわからない。結果、間違ったメッセージが伝わり、想定外の相手の反応を招き、対話の主導権を奪われる。
そこで相手の受け皿とは何かと考えると、相手の物事への認識とそこから生まれる感情の起伏である。ここを先ずおさえないと相手に何を発信していいのかわからない。
ところが、逆に自分の物事への思い込みとそこから生まれる感情の起伏が相手を知ることを邪魔する。相手を“素直に”受け入れられない。相手の言っていることを勝手に解釈する。嫌いなタイプの人は色眼鏡で見る。また逆に好きなタイプだと過剰評価する。怒りで興奮している時は相手の言うことがいちいち突っかかってくる。突き詰めると実はその原因は自分にあることが多い。
自分との対話とは、先ず、この凝り固まった“自分”を一旦、「無」にする作業とも言える。相手の受け皿を受け入れる度量を自分の中に仕掛けることである。自分の思い込みや感情に呪縛されない力を身につけることである。まさに自分との日々の対話がこの度量と力を育てる。
心の動きが自分の働きを呪縛する
日常は自問自答の日々である。一念発起、早朝5時に起床と決めても実際に目覚ましが鳴ると起きるか起きないかの葛藤が始まる。「あと30分、いや1時間寝よう。いやいや、ここは起きなければ」あたかも自分の中にもう一人の自分がいて、起きるか起きないかの自問自答を展開する。
自分の心ほど自由にならないものはない。厄介なのは心の自由気ままな動きが自分の働きを呪縛する。落ち込んでいると仕事で本来持っている力の発揮が削がれる。動揺しているとプレゼンテーションが上手くいかない。怒りや嫌悪感が商談や交渉をダメにする。意地を張ると人間関係を悪くする。
心の呪縛とは、
① 心が奪われる。
② 心が執着する。
③ 心が動揺する。
④ 心が狭くなる。
⑤ 心が萎える。
である。
心の呪縛から自分の“働き”を守るには自分との対話力を鍛えるしかない。
言い方を変えると、自分の心の動きをコントロールすることである。ところが自分のものであっても自由にならないのが心である。目の前の事象によって心は一喜一憂、絶えず揺れ動く。憂いたり、怒ったり、悲しんだり、喜んだり、驚いたり、その定るところを知らない。この心の呪縛が相手を知ることを妨げるだけでなく、こちらの“働き”にも影響し、相手との柔軟な対話を損なう。
さらに調べる
-
チェンジリーダーは時に意表を突き、流れを変える
June 17, 2024
-
チェンジリーダーは「危機」の中に「機会」を見出す
June 3, 2024
-
「変わらないもの」を示すのもチェンジリーダーの仕事
May 20, 2024