「クライシスを生き抜くための6つのポイント」クライシス・コミュニケーションの視点から(4)
ソーシャル・コンプライアンスはリーガル・コンプライアンスと違って、社会通念、社会常識の変遷とともに、その尺度が変わるということを、前回述べた。
尺度が一定でないため、その都度、どのような判断基準をもってメッセージを発信するかが“鍵”を握る。
クライシスの際に、ソーシャル・コンプライアンスの視点からメッセージ発信するときのいくつかのポイントがある。
1.「当事者意識」を持つことが最大の防御
とにかく「当事者意識」をしっかり持っていることを“伝える”以外に逃げ道はない。
やはり人間の性(さが)か、企業不祥事や事故などクライシスを起こしてしまうと“やばい!”と感じ、思わず自己弁護に走る。これがメッセージとして伝わると“当事者意識なし!”ということで、世間、世論がハイエナ化する。
2.すべてを「相手視点」から(相手とは被害者)
クライシスが起こると「自己視点」のG(重力)が強く発生する。これをどれだけ早く「相手視点」にギア・チェンジできるかが勝負を決める。コンサルタント、当局などの第三者を参画させることが、この「自己視点」の呪縛から、自らを“開放”する上でたいへん有効である。
3.「主張」ではなく「受け入れ」
とにかく、起こしてしまった事態を真摯に“受け入れる”ことである。ここの“往生際が悪い”と地獄を見る。ましてや、“主張する”など自殺行為である。
4.「理」ではなく「情」
クライシスのときは“感情”が支配する。マスコミも感情論を煽る。“理屈”をこねては“ダメ”である。火に油を注ぐようなものである。
5.メッセージの一貫性を「死守」
これが難しい。クライシスにおいて、情報コントロールが可能なケースは稀である。
電車の脱線事故のように、日常生活の場で起こったクライシスは様々な目撃報道が拡散、収拾がつかなくなる。さらに“内部告発”が追い打ちをかける。このような場合、社員、組合、当局(管轄官庁、警察、事故調査委員会)などの関係者とどれだけメッセージ発信に関して共同歩調がとれるか、被害者がメッセージを受け取る接点(マスコミ報道、WEB、商品回収対応、コールセンター、その他の社員対応など)に一貫したメッセージを送り込めるか。組織的な対応が求められる。
6.余計なおしべりは「ご法度」
余計なおしゃべりは“失言”を誘発する。ただでさえ、発信したメッセージが“誤解”、“曲解”によってねじ曲がってしまう世界で、“失言”などは言語道断である。
通常、“失言”の温床は「自己視点」から抜け切れないからである。第三者を早い時期に入れることによって、「相手視点」への切り替えることが絶対的に必要となる。
これらの6つのポイントを頭に入れながら、次回は3月4日に行われた小沢民主党代表の記者会見でのメッセージがクライシス・コミュニケーションの視点から見たらどう”あるべき“だったかを検討する。