「"主張"を避けよ」クライシス・コミュニケーションの視点から(2)
でお伝えした通り、クライシスのときは“当事者意識”を持って事に当たっているというメッセージを出すことが最重要課題である。
これしかクライシスを乗り越える道はないと覚悟することである。
少しでも“当事者意識がない”と思われた途端にマスコミと世間(世論)は“ハイエナ化”し、一斉に襲い掛かってくるが、“当事者意識がない”と思われないために、絶対にしてはいけない事がある。
「主張」することである。
クライシスが起こったら、「主張」してはだめである。
「受け入れ」の姿勢を示すしかない。
とにかく、クライシスの事態を真摯に「受け止め」、全力でクライシスの終息のために動いているという“当事者意識”を伝える以外に方法はない。
下手に「主張」すると、そこに“加害者”VS“被害者”という対立構図が生まれる。
これがマスコミの恰好の餌食となる。マスコミは対立を好む。
対立をあえて作り出し、いかにひどい“加害者”かというレッテルを貼りつけ、世論を煽る。理屈ではない、怒りという感情が支配する場となる。
理を「主張」すればするほど“当事者意識”がないというメッセージが発信されてしまう。
さて、小沢民主党代表の3月4日の記者会見を見ると「主張」一色である。
“政治的、法的には不公正な国家権力、検察権力の行使である”
“民主主義を危うくする”
などなど。これらの「主張」は前述したように対立構造を生むと同時に、「すり替え」という印象を与えかねない。
また、事実関係がまだ完全に確定していない段階で“言い切る”という「主張」は危険である。
“政治資金規正法に違反していない”と“言い切る”ことによって、後日、それに反する事実が判明した場合、乗数倍の反動がやってくる。
“JR西福知山線脱線事故の際、事実確認が不十分な段階で“粉砕痕が確認された”と事故当日にJR西が発表、線路上に置き石があったかのようなメッセージを出したことがあった。
後に国交省、事故調査委員会、目撃者などから、その事実が否定され、JR西の原因を他になすり付けようとする姿勢が伝わり、世論から火だるまにされたことは、まだ記憶に新しい。
今回の記者会見で「主張」したことが、マスコミや世論の動向をどう影響するか。今後、注目していくことが重要である。
ところで、クライシスの場合、とにかく被害者への対応が最優先課題である。
まず被害者救済と被害の拡大を止めることである。
今回の民主党のクライシスにおける“被害者”は誰か。それは国民である。
与党である自民党・公明党の政権担当能力が疑問視される中、選択肢としての民主党が注目されてきていた。
その期待を壊し、政治不信を拡大したことが、今回、国民に与えた“被害”である。この“被害”拡大を止めることが民主党の急務である。そこにどれだけ“当事者意識”の姿勢を示せるかが、今後の課題である。
今回の記者会見で小沢民主党代表の“被害者”である国民に対する“謝罪”がなかったことが、もう一つ気になる点である。
クライシス・コミュニケーションの視点から、今後の成り行きに注目していきたい。
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