首相の発言はなぜこれほどまでに“ブレ”まくるのか
空前のコミュニケーションを組織したオバマには3つの凄いところがある。
- 対立や違いを超えてアメリカ人の意識をひとつにしたこと。
- 建国の理念という原点回帰を通じて、アメリカ人を元気にしたこと。
- 空前のコミュニケーションを組織したこと
そして、もうひとつは
である。
空前の“口コミ空中戦”と表現してもいい。
オバマ現象はオバマ個人のコミュニケーション力に帰するものではなく、オバマのコミュニケーションを支えた組織力によって出現したものである。
2000人のスタッフ、100万人にものぼるボランテイアによって2年間にわたり、組織的に展開されたコミュニケーションなのである。
オバマは歴代の大統領候補の中では極めて失言が少ない。また、そのメッセージの一貫性においてはオバマの右に出る者はいない。
2004年7月の民主党大会での演説からオバマ伝説は始動するが、2009年1月の大統領就任演説に至るまで、一切、メッセージの“ブレ”はない。
これはオバマ個人の力量というよりもオバマの背後で失言回避とメッセージの一貫性確保を担っていた組織力のおかげである。その組織を構成していたコミュニケーションのプロ集団によってオバマのコミュニケーションは守られていた。
転じてわが国の麻生総理のコミュニケーションを見ると、オバマと比べて雲泥の差がある。
まさに「自爆発言」の連続、定額給付金や解散については「ヤル、ヤル」と言ってやらない麻生総理のことを「ヤル、ヤル」詐欺だといって野党がなじる。
直近は、「郵政民営化は実は反対であった」という発言があった次の日には修正が入る。
また、「郵政民営化の担当でなかった」と明確に国会で言い切る姿を見る一方で、昨年の8月にあった自民党総裁選での討論会で麻生さんが「私が郵政民営化担当です」と明確に述べた映像が報道される。
麻生総理のメッセージは“ブレ”ているとよく批判されるが、これは“ブレ”どころの騒ぎではない。
一国の首相の発言がなぜこれほどまでに“ブレ”まくるのか。
それは組織的な努力によって麻生総理のコミュニケーションが守られていないからである。
首相のコミュニケーションがしっかりと組織されていれば、昨年、自民党総裁選での麻生総理のすべての発言はデーター化されており、一貫性を保つという視点から、あのような失言は回避できた。
コミュニケーションは組織することが出来る。
これからあらゆる組織のリーダーが自らのコミュニケーションを組織することが必要になってくる。
組織的なコミュニケーションによって自らのメッセージ性を守ることであり、この組織的なコミュニケーションを持たずにメッセージ発信するリーダーは「裸の王さま」である。
かつてのIBMのガースナー会長が、CEOの役割は「メッセージを社内外に発信することだ」と言い切った。
しかし彼には彼のメッセージ性を守る組織があった。
ガースナー会長室の右手は法務部、左手はPR(Public Relations)部と両脇をしっかりと固め、ガースナーのメッセージをリーガル・コンプライアンスの視点で法務部がチェックを入れ、ソーシャル・コンプライアンスの視点からPR部が確認するといった仕組みになっていたと言われる。
つまり、トップのコミュニケーションがちゃんと組織されていたのである。
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