首相官邸VSホワイトハウス、“竹やり”対“ミサイル”の戦い

オバマが組織化されたコミュニケーションによって彼のメッセージが守られているのに対して、麻生総理は丸裸でメッセージを出し、“自爆発言”を重ねていることは前にも話した

実は同じことが、日本の首相官邸とアメリカの大統領府(ホワイトハウス)にも言える。

まだ民主党の選挙コンサルをやる前の話だが、一度、首相官邸をある人の紹介で訪ねたことがある。当時の官邸の主(ぬし)は小泉総理である。そのときに首相官邸のコミュニケーション機能についていろいろと話を聞いた。

その当時は首相のコミュニケーションに関わる担当者は二人とのことであった。一人は財務省(大蔵省?)から、もう一人は外務省から。財務省から出向してきた人は日本のマスコミ対応、外務省から出向してきた人は海外のマスコミ担当であった。
多分、外務省の人間であれば英語ができるだろうという考えにもとづいた人事であろう。それぞれ大変に優秀な方々であったが、コミュニケーションの専門家ではない。この体制にはびっくりした。

仮にも世界第二位の経済大国日本の首相のコミュニケーションを担当するのが2名とは。クリントン大統領時代のホワイトハウスのコミュニケーション体制は20~30人のコミュニケーション専門家による体制を組んでいたことを記憶している。

ブッシュ政権の時代はその規模は100人レベルに達していた。報道官のほかに、コミュニケーション担当の補佐官もいる。彼らは前日までの世界のあらゆる情報を分析、どのようなメッセージを大統領は世界や国内に向けて発信するべきかの戦略を作成、その日の大統領のメッセージを作成、発信スケジュールを組む。単なるマスコミ対応の域を出ている。

世界を動かすためにアメリカ合衆国大統領のメッセージという“ミサイル”を撃ちまくる。
アメリカは軍事力や経済力だけで世界を動かしているのではない。メッセージというミサイルを撃つコミュニケーション力で動かしているのである。日本の首相官邸と比べると雲泥の差である。喩えるならば、日本は担当している個人は優秀だが、組織がない。個人が“竹やり”で一所懸命がんばっているかたちである。片やホワイトハウスは専門家からなる組織をもって“ミサイル”を撃つほどの仕組みをしっかりと持っている。まさに“竹やり”対“ミサイル”の勝負である。首相官邸の体制も当時とは違うとは思うが、日本のメッセージ発信基地としての機能という面ではまだまだ程遠い感がある。

オバマのホワイトハウスの戦略コミュニケーション力が注目される。その仕掛けを学ぶことが日本をコミュニケーションという力でどう武装するかという視点を与える。