千原ジュニアから学ぶ“ネタ探しの極意”(フライシュマンヒラード 朝喝(アサカツ)* 第3回)

今日は、日常生活においてコミュニケーションの視点からものを見るという癖をつけることが大事だという話をします。

2009年に一ツ橋大学の学園祭に呼ばれ、ロンブーの敦さんと対談する機会があり、その時以来、吉本芸人のコミュニケーションの手法に注目してきました。

週末にジャニーズの嵐の番組で千原ジュニアが出演、話し方の講座をやっていました。その中で、印象的だったのが、話し方を鍛えるために、千原ジュニアが日常心掛けていることです。彼は自分が見たこと、聞いたこと、経験したことなどの中からお笑いのネタを見つけ、すぐ人に話すことを実践しているそうです。

僕も面白かった事をすぐ人に話す癖があります。人はよく僕のことを「人の話をよくパクる」と言いますが、“パクリ”は“真似”とは違います。こちらのひと捻り(ひねり)を加えてはじめて“パク”った事になります。このひと捻り(ひねり)が重要なのです。捻るとは、言い方を換えれば“ネタ”にすることです。見たこと、聞いたこと、経験したことの中からネタを探すことです。千原ジュニアの場合は、お笑いのネタを日常の生活の中から探し続ける不断の努力をしているわけです。

僕の“パクリ”癖は多くのジャーナリストとの接点(メデイア・リレーション)の中から身についたものです。27年近くコミュニケーションの仕事をやってきましたが、その間に約3000人近くのジャーナリストといろいろな接点をもちました。

ジャーナリストと関係性をつくるには、どうしてもネタが重要です。ジャーナリストが面白いと思う捻りです。記事を書くのに役に立つネタです。このネタを豊富に提供するからこそジャーナリストとの関係をつくりあげることができます。ところが問題は、ネタ欠乏症にすぐ陥ってしまうことです。

お笑い芸人が絶えず笑いのネタをつくり出し続けなければならないように、凄腕のメデイア・リレーションの達人になるためには、捻りネタを絶えず見つけ出す努力が必要となります。特に米国ホンダの広報をやっていた時にはホンダの話だけでは、ネタはすぐに尽きてしまいます。他の自動車メーカーの話、業界全体の課題、自動車の通商問題、さらには日本政府の政策、日本の産業構造、日本の文化・歴史にまで及ぶ幅広い分野でのネタ探しをするわけです。

しかもそれはジャーナリストから見ても面白いという捻りがあるものでないとダメです。こうなるとネタ探しの旅に絶えず出ているようなもので、物事や事象に対する観察力、そこからネタを捻り出す意味づけ力、そして、そのネタを相手に伝える伝達力が自ずと備わってきます。

日常の様々な事象や出来事の中から捻りネタを見つけ出し、人にそれをすぐ話すことを心掛けている千原ジュニアの姿勢はコミュニケーションを生業とするわれわれにとって非常に参考になるということです。(つづく)

*「フライシュマンヒラードの朝喝(アサカツ)」。このシリーズでは、フライシュマン・ヒラード・ジャパン・グループで毎週行っている社員向けのスピーチの一部を紹介していきます。最新のコミュニケーション・ビジネス事情、心得など社内で話しているテーマを垣間見ることができます。(前回の「朝喝(アサカツ)はこちら

~~~~~~~~~~~~~~~筆者経歴~~~~~~~~~~~~~~~~~

田中 慎一
フライシュマン・ヒラード・ジャパン 代表取締役社長

1978年、本田技研工業入社。
83年よりワシントンDCに駐在、米国における政府議会対策、マスコミ対策を担当。1994年~97年にかけ、セガ・エンタープライズの海外事業展開を担当。1997年にフライシュマン・ヒラードに参画し日本オフィスを立ち上げ、代表取締役に就任。日本の戦略コミュニケーション・コンサルタントの第一人者。近著に「オバマ戦略のカラクリ」「破壊者の流儀 不確かな社会を生き抜く”したたかさ”を学ぶ 」(共にアスキー新書)がある。

twitterアカウント:@ShinTanaka