ロビイングという“権利”(後編)(戦略コミュニケーションの温故知新* 第9回)

前回からの続き)広義にロビイングを定義すると、前述したGovernment Relations、Public Affairs、Public Advocacyなども含まれる。

そこには3つの基本要件が必要である。

①国益と企業益をどのように一致させるか。

②世論の支持をどう取りつけるか。

③政策決定者や影響者にどうアクセスするか。

よくロビイストというと政策決定者とのコネクションで政策に影響を与えると勘違いしている人が多い。

確かに、そのようなケースは皆無とは言えないが、単に人を知っているだけでは意味がない。

日本ではこの手の輩が横行している。それはあくまで斡旋屋でしかない。

基本的に政策決定者を動かすのは世論である。

特に先進国社会ではカネや組織票の影響は急速に薄れてきている。

世論を動かすには国民が共感する課題設定が鍵を握る。

だからこそ公に開示された情報に基づいて国民が共感できる課題を設定、
その課題解決が国益と企業益にもつながるという設計図を描く。

それを直接、政策決定者に説く。

同時にマスコミ、有識者、グラスルーツ活動を通じて社会的共感をつくり、間接的に政策決定者にメッセージを撃ち込む。

これがロビイングの基本構図である。

そのためには、ロビイングのプロセスが国民にオープンになっていることが重要となる。

密室では世論は醸成できない。

例えるならば、政策決定者にメールで説得しているのに対して、ツイッターで政策決定者を口説いているようなもので、皆がどう口説くのかを見ている。

口説き方によって、世論の支持が決まる。

世論をどう味方につけるかがロビイングの肝である。

*「戦略コミュニケーションの温故知新」。このシリーズでは一度、原点回帰という意味で私のコミュニケーションの系譜を振り返り、整理し、そこから新たな発想を得ることが狙いです。コミュニケーションの妙なるところが伝えられれば幸いだと考えます。

~~~~~~~~~~~~~~~筆者経歴~~~~~~~~~~~~~~~~~

田中 慎一
フライシュマン・ヒラード・ジャパン 代表取締役社長

1978年、本田技研工業入社。
83年よりワシントンDCに駐在、米国における政府議会対策、マスコミ対策を担当。1994年~97年にかけ、セガ・エンタープライズの海外事業展開を担当。1997年にフライシュマン・ヒラードに参画し日本オフィスを立ち上げ、代表取締役に就任。日本の戦略コミュニケーション・コンサルタントの第一人者。近著に「オバマ戦略のカラクリ」「破壊者の流儀 不確かな社会を生き抜く”したたかさ”を学ぶ 」(共にアスキー新書)がある。

☆twitterアカウント:@ShinTanaka