グローバル化するコミュニケーション(前編)(コミュニケーション百景 第8回)

グローバル化が加速する中で、日本のコミュニケーションのあり方が大きく変わろうとしている。

コミュニケーションの黒船来襲である。

従来の日本のコミュニケーションのあり方は、「波風を立てない」ということがその根底にある。

これは「ホンネとタテマエ」という日本独特の思考プロセスに起因している。

オモテのコミュニケーションウラのコミュニケーションである。

日本の組織風土では、まずウラのコミュニケーションとして、根回しを関係者に行い、大体「落としどころ」が見極められてから、オモテのコミュニケーションである正式な会議で「落としどころ」が確認される。

これは、会議では「波風を立てない」という暗黙の了解に基づいておこなわれる。

程度の差はあるにせよ、日本的組織では共通するコミュニケーションのあり方である。

一方、グローバル的に見たコミュニケーションの主流は、逆に「波風を立てる」やり方である。

敢えて波風を立てるような強いメッセージを発信することによって、自己のポジショニングをより明確に主張する。

そこからの反動を利用して、自らのメッセージ性を更に高める。

そして、最初からオモテの世界で勝負をする。

日本的コミュニケーションとグローバル的コミュニケーションを「プロレス」対「K1」

の構図に喩えた人がいた。

「プロレス」は血を流しながら双方とも戦うが、どこかに「落としどころ」を探り

ながら闘う。この「探り合い」は観客には見えない。つまり、見える部分と見えない

部分の妙がある。ところが、K1は「落としどころ」などは考えない。

とにかく、観客の目の前で相手を実際に叩き潰す。見える部分での勝敗しか認めない。(つづく)

*「コミュニケーション百景」。このシリーズのモットーは“コミュニケーションを24時間考える”です。寝ても覚めてもコミュニケーションを考えることを信条にしています。コミュニケーションでいろいろと思いつくことを書き綴っていきたいと思っています。

~~~~~~~~~~~~~~~筆者経歴~~~~~~~~~~~~~~~~~

田中 慎一
フライシュマン・ヒラード・ジャパン 代表取締役社長

1978年、本田技研工業入社。
83年よりワシントンDCに駐在、米国における政府議会対策、マスコミ対策を担当。1994年~97年にかけ、セガ・エンタープライズの海外事業展開を担当。1997年にフライシュマン・ヒラードに参画し日本オフィスを立ち上げ、代表取締役に就任。日本の戦略コミュニケーション・コンサルタントの第一人者。近著に「オバマ戦略のカラクリ」「破壊者の流儀 不確かな社会を生き抜く”したたかさ”を学ぶ 」(共にアスキー新書)がある。

☆twitterアカウント:@ShinTanaka