グローバル化するコミュニケーション(後編)(コミュニケーション百景 第9回)

(からの続き)日本的なコミュニケーションは、プロレスのように、見える部分と見えない部分の微妙なバランスの上で成り立っている。

コミュニケーションのグローバル化は「公」(Public)の世界での戦いである。

グローバルという異文化世界が錯綜するところでは、オモテの世界での勝敗しか認められない。

日本は欧米と比べると、非常に「ブラック・ボックス」化した社会である。

企業や国の意思決定や情報共有の部分で多くの「ブラック・ボックス」が存在する。

情報は限定された当事者間で囲い込まれており、意思決定のプロセスも不透明な部分が多い。

情報開示と透明性は時代の要請であり、避けては通れない時代のうねりである。

このグローバルな流れが、この日本的な不透明さを一気に押し流す。

もはや、オモテとウラをうまく使い分ける従来のやり方は通用しない。

企業も国も、これからは、「公」(Public)の舞台に引きずり出される時代なのである。

それは「世論」であり、さらに国の場合は「国際世論」という舞台である。

そこではオモテの世界のルールに従ったコミュニケーションのやり方が強さを発揮する。

従来の当事者間での「利害」中心のウラのコミュニケーションから当事者関係を超えた「共感」中心のオモテのコミュニケーションへのパラダイム転換である。

「公」(Public)の世界でどう戦うか。

開かれた世界において、メッセージ性を高めるコミュニケーション力学を身につけることが必要不可欠な時代になる。

*「コミュニケーション百景」。このシリーズのモットーは“コミュニケーションを24時間考える”です。寝ても覚めてもコミュニケーションを考えることを信条にしています。コミュニケーションでいろいろと思いつくことを書き綴っていきたいと思っています。

~~~~~~~~~~~~~~~筆者経歴~~~~~~~~~~~~~~~~~

田中 慎一
フライシュマン・ヒラード・ジャパン 代表取締役社長

1978年、本田技研工業入社。
83年よりワシントンDCに駐在、米国における政府議会対策、マスコミ対策を担当。1994年~97年にかけ、セガ・エンタープライズの海外事業展開を担当。1997年にフライシュマン・ヒラードに参画し日本オフィスを立ち上げ、代表取締役に就任。日本の戦略コミュニケーション・コンサルタントの第一人者。近著に「オバマ戦略のカラクリ」「破壊者の流儀 不確かな社会を生き抜く”したたかさ”を学ぶ 」(共にアスキー新書)がある。

☆twitterアカウント:@ShinTanaka