これからの外交、"間接話法”を利用せよ(戦略コミュニケーションで斬る*第17回)

外交は国益を守るための戦略コミュニケーションである。

狭義の外交は各国の外交当局間の外交折衝である。

これは当事者間の直接話法で、各国がその利害を超える事が難しく、強要か譲歩の中で落とし所を模索、妥協点を見つけるプロセスである。

この限界を乗り越える方法として相手の国の世論を味方につけ、その世論をテコに相手国に譲歩を迫る間接話法がある。

中国が北京へのオリンピックの誘致に動き出した際は、米国は天安門事件の絡みから反対の姿勢を貫いていた。

中国はグローバルネットワークを持つ米国のPRファームを採用、米国の世論の味方化をはかる。

結果、ホワイトハウスから北京へのオリンピック誘致に関しては米国は中立な立場をとる旨を発表するまでに持ち込む事に成功する。

これからはますます、間接話法を使った総合外交の時代がくる。

世界が多極化する中で、今後は相手国の世論だけでなく、世界世論を味方につける事が重要になる。その鍵は国際会議である。

しかも、国主導ではない、民間主導のものである。良い例がダボス会議である。

もはや国が主導するサミットでは国際世論をつくる事は難しくなってきている。

民間主導の国際会議には各国首脳だけではない、経済人、学者、文化人、NGOなどが多くの集まる。

ここで醸成された考え方が世界世論を形成する。

これからの総合外交は民主導の国際会議において日本の声(Voice)を確立して行くか、それによって世界世論世論を味方につけるかであう。

更には、日本自らが主催する国際会議をつくる事が、日本の世界における立ち位置をつくるために不可欠である。

フクシマ会議は世界の世論を味方につけるだけでなく、それを引張って行く日本の総合外交の柱になり得る。

*「戦略コミュニケーションで斬る」。このシリーズでは、様々な時事的な事象を捉えて、戦略コミュニケーションの視点から分析、戦略コミュニケーションの発想から世の中を見ていきます。

~~~~~~~~~~~~~~筆者経歴~~~~~~~~~~~~~~~~

田中 慎一
フライシュマン・ヒラード・ジャパン 代表取締役社長

1978年、本田技研工業入社。
83年よりワシントンDCに駐在、米国における政府議会対策、マスコミ対策を担当。1994年~97年にかけ、セガ・エンタープライズの海外事業展開を担当。1997年にフライシュマン・ヒラードに参画し日本オフィスを立ち上げ、代表取締役に就任。日本の戦略コミュニケーション・コンサルタントの第一人者。近著に「オバマ戦略のカラクリ」「破壊者の流儀 不確かな社会を生き抜く”したたかさ”を学ぶ 」(共にアスキー新書)がある。

☆twitterアカウント:@ShinTanaka