「破壊者の流儀」~不確かな社会を生き抜く“したたかさ”を学ぶ~(アスキー出版) 2月10日に発売開始
昨年は「オバマ現象のカラクリ」(アスキー出版)を出版し、オバマ現象を素材に説得のコミュニケーションから共感のコミュニケーションへのパラダイム・シフトについて書いた(オバマ現象のカラクリについての記事)。今回の「破壊者の流儀」では、“信長の茶”ということをテーマにして、“立ち位置力”について考えてみた。
「お茶と立ち位置力?」不思議に思われるかもしれないが、茶道のプロセスの中に「立ち位置をつくる」ために役立つ“秘密”が隠されていると確信している。それを紐解いていくことが今回の本の趣旨である。そこには“したたかな”立ち位置をつくるための戦略コミュニケーションの発想の萌芽がいっぱい散りばめられている。この茶道のプロセスを左脳だけでなく、右脳で経験することによって戦略コミュニケーションの原理・原則が見えてくる。
これからは、個人も、リーダーも、企業も、国も、“したたかな”立ち位置をつくることが厳しく求められてくる。
この本の執筆にあたっては、小泉純一郎氏、孫正義氏との御縁を頂き、“信長”についていろいろと直接話をするための茶会を実施することができた。
織田信長は中世という既存の体制を破壊、新たな時代の枠組みを創造したリーダーである。“破壊”と“創造”を繰り返し、新たな世界の実現を目指した織田信長は、革新のための“破壊者”と位置付けることができる。孫氏と小泉氏は現代の信長を彷彿させる。古い価値を“破壊”する、そして新たな価値を“創造する”。この“破壊者の流儀”を信長の茶の中に、現代の二人の信長とともに、語れたことは大変に貴重な経験であった。
今回の本のもう一つの目的は、信長と戦略コミュニケーションのかかわりを考えてみたかったことである。個人的にも信長が好きであるが、信長に魅かれるのは、彼が軍事や経済の天才だからということだけではなく、彼がコミュニケーションの天才だからである。
一見、信長とコミュニケーションとは結びつかないように思われるかもしれないが、 信長の凄さは、49年という短期間で日本史上もっとも多くの人々の意識を変えたことにある。新たなものを創ろうとする“破壊者”にとって最大の“敵”は変化を嫌う人間の意識である。中世から近世へ、群雄割拠から天下統一へと大きな変化の実現にはとてつもない変化を嫌う多くの人々の意識の壁が立ちはだかる。
信長は見事にこれら意識の壁を完膚無きまでに“破壊”、新たな方向性に人々の意識を誘った。信長というと「天下布武」という言葉が有名だが、とかくに信長は武力によって天下を平定しようとしたというイメージがある。また、ともすれば独裁者や暴君というイメージが信長にはつきまとう。しかしながら、武力や恐怖だけでは人の意識は変わらない。
天下統一まであと一歩に迫るまでの変化を軍事力や恐怖のみによって束ねることは不可能である。もしそうであれば、信長はとっくにもっと早い時期に殺されている。戦国時代とはそういう時代である。信長はコミュニケーションという“人の意識を変え、人を動かす”チカラを総動員することで親族、家臣、同盟者、領民、商人、職人、公家、朝廷など数多くの利害関係者、いわゆるステークホルダーを、そして世論を信長の描く新たな世界の実現のために動かしたのである。
ここにコミュニケーションの天才としての信長の真骨頂がある。次回のブログからは、信長がどのようにして“変化を嫌う意識”と戦ったかを書き綴っていきたい。
*「戦略コミュニケーション」はフライシュマンヒラードジャパンの登録商標です
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