信長の破壊の流儀 - 第1回「信長ぎらい」

作家、藤沢周平は「信長ぎらい」と題したエッセイにこう記す。
「嫌いになった理由はたくさんあるけれども、それをいちいち書く必要はなく、信長が行った殺戮ひとつをあげれば足りるように思う」

山中の堂塔伽藍をことごとく焼き払い、僧俗3000~4000人を虐殺した比叡山の焼き討ちや、男女2万人を焼き殺した長島一向一揆討伐など、織田信長は日本史上類例のない大量殺戮を行っている。こうした残虐な殺戮行為ゆえに、信長には熱心なフアンとともに、少なからぬ「信長ぎらい」がいるのも確かである。

信長の大量殺動行為については、稿を改めて考察するとして、「信長好き」も「信長ぎらい」も、信長を独断的なリーダーと見る点では一致する。桶狭間の戦いに見る果敢な行動力、長篠の戦いや兵農分離、楽市楽座に見る独創性、将軍廃位や蘭音待切り取りなどが象徴する専制性。強大な恐怖と畏敬によって有無も言わさず周囲を従わせる専制君主というのが、現代日本人が持つ信長像の最大公約数だろう。