中国のレピュテーション・マネジメントを問う ~自らのメッセージの反作用で一撃を喰らう~

外交はメッセージというミサイルを使った戦争のようなものである。尖閣問題はまさに日本vs中国のコミュニケーション戦争である。

ドイツの兵学家クラウゼビッツは、その「戦争論」で「戦争とは、敵を強制してわれわれの意志を遂行させるために用いられる暴力行為である」と定義している。武力という物理的手段によって敵にこちらの意志を押しつけることが目的であると説く。であれば差し詰め外交とは、武力という物理的手段は使わないが、メッセージというコミュニケーション手段によって相手国にこちらの意志を押しつけるものと見ることができる。

戦争は物理的力学を使う。外交はコミュニケーション力学を駆使する。このコミュニケーションが力学として始動するためにはどのようなメッセージを誰に、何時、どのようは方法で伝えるかが鍵を握る。

メッセージは3つ方法で相手国を動かす。1.“共感を醸成する”2.“物欲に訴える”3.“恐怖を与える”ことによってである。

今回の尖閣諸島問題で中国が取ってきたさまざまな動きは基本的には日本に対して“恐怖を与える”メッセージとなっている。東シナ海ガス共同開発条約交渉の延期(9/11)、丹羽中国大使を休日の未明に呼び出すなどの異例の対応(9/12)、中国国家海洋局による沖縄本島西北西海域での海上保安庁測量船の調査中止要求(9/13)、中国全国人民代表大会(全人代)の李建国常務委員会副委員長来日の延期(9/14)、日中間の閣僚などの高官レベルの往来を停止(9/19)、中国河北省でフジタの日本人社員4人拘束(9/20)、米ニューヨークタイムズが一面トップで「中国、レアアースの日本への輸出を全面禁止」を報道(9/23)、船長を釈放するも、中国、日本に対して謝罪と賠償を要求(9/25)などである。

メッセージは相手を動かす力として作用する。当然ながら力の作用がある限り、物理学でいう作用・反作用の法則が成り立つ。強いメッセージを出せば、それなりに強い反作用を受けることになる。

コミュニケーションを力として使う場合、その作用と同時に反作用も意識しないと想定外の反撃を喰う羽目になる。今回の尖閣諸島問題において中国はその発信したメッセージの“反作用”によって潰された。