日本に求められる“したたかな”(強かな)コミュニケーション、戦略コミュニケーションの発想(1)
10月25日―27日と香港でフライシュマン・ヒラードのアジア・パシフィック会議が行われた。36人のアジア・パシフィック(アメリカを含む)の代表が集まった。ヨーロッパからの参加もあった。この会議は定期的に行われており、意見交換の場になっている。
関心はやはり中国。とくに尖閣諸島の問題が結構クローズアップされた。36人とも各国を代表する戦略コミュニケーションの“プロ”達である。彼らが異口同音に言ったことは尖閣諸島の問題では「日本はうまくやったね」ということである。
この問題により中国の脅威は鮮明になる一方、日本への同情が高まったというのが彼らの共通の考えである。昔、日露戦争のとき、横暴なロシアに対して日本に対する国際的な同情が集まり、それが国際社会の日本への支持につながった話と重なる。
今回は確かに、日本に神風は吹いたということになるかもしれないが、日露戦争の時との大きな違いは、当時の日本には“したたかさ”があった。当時の国際社会は勝手に日本に同情したわけではない。
日本は戦費を賄う海外での国債の発行を成功裏に収める必要があった。そのためには国際社会の支持獲得が不可欠であった。日本は国際社会からの“同情”を仕掛けたのである。
今回の尖閣諸島のケースでは、外から見ると同情を買ったということでは“したたか”に見えるが、それはあくまで結果としての“したたかさ”であって、意図した“したたかさ”ではない。
今回、日本が得た最も大きな実益は、中国の脅威の増大の中で「やはり日本しかないと」アメリカに再認識させたことである。これは日米関係を再構築・再強化するチャンスである。
しかしながら、それを“したたかに”活用するといった姿勢はみられない。中国を牽制するのは、唯一国際世論である。中国には“直接話法”は効かない。あくまで中国の堀を埋めるような国際世論という間接話法を仕掛けることである。
TPPへの参加なども中国に対して間接的に有効な牽制メッセージを発信する。しかしここでも日本の意志と覚悟が見えない。日本は“したたかな”コミュニケーションを取り戻すことが緊急に求められている。
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