なぜ成功する人は“パクリ”が上手いのか(コミュニケーション百景 第18回)
テレビ東京の番組「美の巨人たち」を見る。
ルネッサンスを代表する3名の芸術家、科学のダビンチ、情熱のミケランジェロ、そして調和のラファエロ。
中でもラファエロは天才的に優れた、”パクリ”の名人だったようだ。
ダビンチからは輪郭をぼやかす手法、ミケランジェロからは躍動的な肉体表現をパクる。
パクリは決して悪いことではない。
相手の優れたものを、一旦吸収して、それに自分の独創を入れ込むのが“パクリ”。
戦略コミュニケーションの世界では“パクリ力”がないと大成しない。
パクリとは様々な視点や発想に敏感に反応、それらと接することにより自分独創の視点、発想を生み出す力である。
真似とパクリは違う。
パクるためには意味付ける感度が問われる。
5分前に相手から聞いた視点に独自の意味付けを行い、新たな発想として別の相手に話すチカラである。
真似では独自の意味付けが無いため、もたない、相手に見透かされる。
自分はどうやってこのパクリ力なるものを鍛えてきたかと言うと、やはり、マスコミ、ジャーナリストとの継続的な対話である。
今までに国内外ほぼ2000人程のジャーナリストとの接点を持つ。
彼らとの長年のやり取りの中でパクリと云うチカラを培ってきた。
対話と言っても、どちらかと言うと格闘技である。マスコミvs広報 ・PRと云う構造の中での対話であるため、守る攻めるの戦いである。
どれだけ記者の人にこちらの視点、発想を打ち込み、納得してもらうかが勝負である。
相手も視点、発想のプロである。なかなか手強い。なまじっかな視点、発想ではあっという間に撃墜されてしまう。
対話がもたない。こちらのメッセージも届かない。
このような状況では、ほって置いても自ずと新たな視点、発想を生み出す意味付け力が備わってくる。
意味付け力を培う相手としてはジャーナリストに限らない、政治家、政策スタッフ、有識者など多様だが、マスコミのように攻める守るの構図がある方が圧倒的にパクリ力向上には役に立つ。
パクリの天才、ラファエロを最も研究したくなった。
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*「コミュニケーション百景」。このシリーズのモットーは“コミュニケーションを24時間考える”です。寝ても覚めてもコミュニケーションを考えることを信条にしています。コミュニケーションでいろいろと思いつくことを書き綴っていきたいと思っています。
~~~~~~~~~~~~~~~筆者経歴~~~~~~~~~~~~~~~~~
田中 慎一
フライシュマン・ヒラード・ジャパン 代表取締役社長
1978年、本田技研工業入社。
83年よりワシントンDCに駐在、米国における政府議会対策、マスコミ対策を担当。1994年~97年にかけ、セガ・エンタープライズの海外事業展開を担当。1997年にフライシュマン・ヒラードに参画し日本オフィスを立ち上げ、代表取締役に就任。日本の戦略コミュニケーション・コンサルタントの第一人者。近著に「オバマ戦略のカラクリ」「破壊者の流儀 不確かな社会を生き抜く”したたかさ”を学ぶ 」(共にアスキー新書)がある。
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