コミュニケーションを技術する!「コミュニケーション技術評価会」

7月11日に第12回目のフライシュマン・ヒラード・ジャパン、コミュニケーション技術評価会を開催した。

この会はあくまで社内イベントで年に2回、7月と12月に土曜日を丸1日使って開催する。日本の全スタッフと一部有識者を交えて行われる。内容は成功例、失敗例も含め、我々が行ってきたサービスのケーススタデイーを検証する”場”である。

あえて”技術”という表現を使っているのはコミュニケーションを属人的なスキルとして漠然と捉えるのではなく、ひとつの体系化されたものとして認識することの重要性を示したかったからである。

コミュニケーションは力である。

力である限り、作用・反作用があり、そこには歴然とした原理・原則がある。特に戦略コミュニケーション・コンサルテイングの仕事は”組織のコミュニケーション”を扱う。コミュニケーション力学をどのように組織の事業戦略実現に活用するかが使命である。

もともと「技術評価会」という言葉はホンダ用語である。基礎研究によって生み出された様々な基礎技術の内、どれを量産モデルに取り入れるかを判断する場として「技術評価会」がある。

コミュニケーションの世界も日々進化している。デジタルの世界が広がる中で、様々なコミュニケーション技術が生まれている。我々が今知っているコミュニケーションの世界は”氷山の一角”なのである。

21世紀最大の課題が”人の意識の壁”を越えることである。

変化がますます加速化する中で、人の意識も同じスピードで変化させていくことが必要となる。特に組織の場合、その組織を支えている多くのステークホルダー(社員、顧客、株主など)の意識を事業環境の変化に合わせて変えていくことが組織生存にとって必要不可欠になっている。

ところが、多様性の流れが人の意識のスピーデイーな変化を阻止してくる。意識が多様になればなるほど、その意識をひとつのまとめることがますます難しくなる。かつては日本の企業は終身雇用というしくみによって、社員の帰属意識を担保していた。

しかし、今は意識の多様性によって帰属意識の希薄化がどんどん進んでいる。社員の帰属意識を高め、”やる気”を出す、新たなコミュニケーション技術が必要となる。

コミュニケーション技術の進化の最近の代表例が”オバマ現象”である。

多様化したアメリカ社会をどうやって一つにするのか。様々な人種、宗教、価値観が混在化するアメリカの人々の意識をどうやって一つにするのか。多様性からくる”分断”、分裂”、”対立”の中で、”立ち位置”を失ったアメリカ人の意識をどうやって原点に戻し元気づけるのか。

これらの課題にオバマは”共感”をつくる事によって、アメリカ人の気持ちを一つにする。元気づける。これはオバマによる新たなコミュニケーション技術の開発である。

それは様々な試行錯誤の中から生まれた。ネットという新たな可能性によって生まれた。従来の欧米的な説得のコミュニケーションから共感のコミュニケーションという新たなコミュニケーションの地平の発見でもある。

ある意味、コミュニケーション技術のパラダイム・シフトが起こったといえる。ニュートン物理学からアインシュタインの相対性理論へと物理学のパラダイムが変わったのと似ている。

コミュニケーションという事象はあまりにも日常的であるために意識をしないことが多い。意識せざるを得ない場面に直面しても、個人のセンスの問題として属人的に片づけられることが多い。また、コミュニケーションとは個人のセンスやスキルの問題であるという認識が強い。

しかしながら、コミュニケーションとは人を動かす力学であり、そこには原理原則が息づいている。また、コミュニケーションは個人だけの問題ではなない。

組織のコミュニケーション力が今求められている。

コミュニケーション技術評価会をスタートしてから早7年になる。これからますますコミュニケーションを技術化することが求められてきていることを日々実感する。

(下記は2009年7月の技術評価会の講演のビデオです。今回のテーマである「独創」について考えてもらうために、私の米国世論への働きかけを中心に行った本田技研工業時代の活動(”無謀”なデトロイト事務所開設、米国からの”輸出”シーンの衛星中継、本田宗一郎氏の自動車殿堂入り後押し等)を振り返っています。)